山林を相続する

現在、日本全国で所有者がわからない山林が増え、様々なトラブルが発生しています。なぜそうしたことが起こるのでしょうか?それは、山林の相続人が適切な手続きを行っていないことに要因があります。

山林を相続する際には、必要な書類を準備して手続きを行いますが、山林の相続を希望しない場合は、地域の不動産会社や森林組合に依頼し、売却をするなどしかるべき対応をしなければなりません。山林を放置すれば、資産価値が下がるだけでなく、自然災害や獣害を引き起こす要因となり、森林保全の観点からも様々なリスクが発生します。

ここでは、山林の相続について考えながら、必要な手続きについて解説します。

1. 山林を相続する際の手続きとは?

山林を相続する際は、次の2つの手続きを行う必要があります。

①所有者の届出

山林を相続した人は、市町村長に所有者の届出をする必要があります。届出をしなかった場合は10万円以下の罰金が法律で定められているため、注意が必要です。

  • 被相続人の戸籍謄本及び住民票の除票
  • 相続人の戸籍謄本
  • 山林を相続する人の住民票
  • 固定資産税評価証明書

また、登録申請するには、登録免許税を納付する必要があります。登録免許税の金額は相続登記の場合、固定資産税評価額の0.4%となります。

また届出の期限は相続発生後90日以内と決められています。そのため、遺産分割ができていない場合でも相続人の共有物として速やかに届出をしなければなりません。

届け出にはいくつか必要な書類があります。

②相続登記

山林を相続する際は、以下の書類を用意し、相続する山林を管轄する法務局で名義変更登記の申請をします。遺言書または遺産分割協議書のどちらで登記するのかによって、遺言書か遺産分割協議書のどちらか一方を提出する必要もあります。

  • 森林の土地の所有者届出書
  • その森林の土地の位置を示す図面
  • 登記事項証明書(相続登記が済んでいる場合)
  • 遺産分割協議書(相続登記が済んでいない場合)

これら2つの手続き以外にも、山林を相続した場合は、そのエリアの森林組合に報告をして売却や管理の希望を伝えておくことをおすすめします。森林組合に自身の意思を伝えておけば、売却の場合は、森林組合が山林の買手や借り手を見つけてくれることがあります。また山林の維持管理は、個人で行うことが難しいため、森林組合に相談し、サポートを得ると良いでしょう。

 

2. 相続手続きをしないことで発生する問題とは?

山林を相続することになったものの、相続をためらう人はもちろんおられます。しかし必要な手続きを怠り山林を放置すれば、大きな問題が発生するのは言うまでもありません。

特に多く見られるのは、名義人を変更していないケースです。山林を相続することになり、詳細を確認すると、名義人が数代前の故人になっていたというようなことは少なくありません。これは、相続登記が義務ではなく、相続人の任意となっていること、また、地方の山林では売却等の必要がなければ、わざわざ費用をかけて名義変更しなくても不利益にはならないため、手続きを怠っているケースが多く見られるのです。

しかしその都度名義変更をしていなければ、いざ手続きをする際には、相続人全員の同意を取り付ける必要が出てきます。過去に遡って各世代の相続人を特定し、相続人全員の同意を得るのは、時間を要する大変な作業になります。

しかも、山林の名義変更をせずに放置した状態でも、固定資産税や管理義務は発生し続けています。つまり配偶者や子ども、孫に、長期間未納となっている固定資産税が請求される恐れがあるのです。

また山林の相続手続きをきちんとしていなければ、売却はできません。これは相続した山林を売却する際に、市区町村への届出や相続登記の証明が必要となるためです。

このように、手続きを怠ることは、大きなデメリットにつながってしまいます。次の世代に負担を残さないためにも、山林を相続した場合には必ず必要な手続きを行うようにしてください。

3. 山林を相続するメリット・デメリット

山林を相続する際には、相続してこれまで通り山を維持管理する人もいれば、山を寄付したり売却したりと手放すことを検討する人もいます。どちらを選択するのかについては、まずはどんなメリットやデメリットがあるかを把握することが大切です。

ここでは、山林を相続するメリット・デメリットについて考えてみます。

3-1. 山林を相続するメリット

山林は個人の資産です。すぐに収益を上げることはできなくても、活用次第で将来的に大きな利益を得られる可能性があり、それが相続をする上での大きなメリットとなります。特に今は新たな土地活用、投資先として、山林は大変注目されています。

山の活用方法としては、次の4つが挙げられます。

山林を貸し出す

山林の場所や大きさなどにもよりますが、自治体や林業を行っている業者をはじめ、個人や民間企業に山林の土地を貸し出しすることで、利益を得られることがあります。

木材の売却(林業)

林業を営み、育成した木材を売却して利益を得る方法です。自分で林業を行うのが難しい場合は、人を雇って収益化するという選択肢もあります。

レクリエーションの場として活用する

近年ではキャンプやハイキングなどのアウトドアが人気を集めています。キャンパーに山林を貸し出しするのも一つの方法です。また、山林を地域のレクリエーションの場として役立てれば、地域貢献につなげることができます。

太陽光発電に活用する

広大な山林には、太陽光発電用の機材を設置できる場所がたくさんあります。日当たりの良い斜面などを上手く利用してソーラーパネルを設置すれば、発電した電気を売って収益を上げることが可能になります。

3-2. 山林を相続するデメリット

山林を相続する場合、相続する山林によっては、デメリットが生じる可能性もあります。どんなデメリットが考えられるでしょうか?

活用が難しいケースがある

山林を相続すると言っても、相続する山林や地域の状況によっては、活用が難しいケースもあります。例えば、山林を貸し出す場合、エリアによってはニーズが少ないこともあります。また林業や太陽光発電においても、山林の維持管理の手間や設備のコストを考慮すると、収益を見込むのが難しいこともあります。

維持費の支払いと管理義務がある

山林を放置すれば、資産価値が下がるだけでなく、自然災害や獣害を引き起こす要因にもなります。山林の維持管理を専門の業者に依頼すれば、その分コストがかかる上、毎年固定資産税の負担も発生します。

ただ山林の活用方法によっては、国や地方公共団体から山林管理のための補助金が支給されることもあります。また固定資産税も一般の不動産に比べると安く済むというメリットはあります。

子孫にとって負担となってしまう可能性がある

山林を保有したまま所有者が亡くなれば、子どもや孫など相続人にとって負担となる場合があります。たとえ山林を活用して収益が出ている場合でも、相続人には山林を所有したり活用したりする意思がないこともありますので、将来相続人となる方と話し合っておくことが大切です。

実際に山林を相続するかどうかを判断するときのポイントは、山林を活用できるかどうかにあります。山林の維持管理に必要な人材やコストを考慮し、それ以上に収益や地域貢献といったプラスの要素がどれだけ見込めるかを、長期的な観点から見極めることが重要です。

山林は、一度相続すると寄付や売却をしない限り、自身の子どもや孫の世代へ残すことになります。次の世代に負担をかけないよう、将来を見据えて相続の有無を周囲としっかり話し合って判断することが求められます。

4. 相続後の山林管理

相続手続きが完了し、正式に山林の所有者になった場合は、適切に山林管理を継続する必要があります。山林は不動産や家屋と同じ個人の資産です。山林を適切に手入れし、スギやヒノキを成長させれば、利益を得ることが可能になります。

山林の維持管理には確かにコストがかかりますが、山林の維持管理を目的とする森林整備事業には、国や地方公共団体などから補助金が支給されます。下刈り、間伐、枝打ち、林道整備など、森林整備事業の多くは補助金の範囲内で実施することが可能になります。

補助金を申請するためには、森林組合員である必要があります。森林組合は、補助金や融資制度の窓口業務を行うだけでなく、間伐や下刈りといった施業委託など、山林管理に関するあらゆる相談にのってもらうことができるため、山林を相続する際は、森林組合に加入されることをおすすめします。

5. まとめ

山林相続は、必要な手続きを行うことが大切です。相続するかどうかを迷っている場合は、地元の不動産会社や森林組合等に相談し、どんな需要があるのか、活用する方法はないか事前にリサーチして検討すると良いでしょう。

また相続して山林の所有者になった場合は、山林の維持管理を続けていくことが求められます。

株式会社緑地管理では、栃木、群馬、茨木の関東圏を中心に、お客様から委託を受けた山林の伐採、地ごしらえ、植林、下刈り、間伐、山林管理を行っています。相続した山林の維持管理にお悩みの際は、緑地管理までご相談ください。

また私たちは、山林を売りたい、売却を検討している方々のご相談にも応じています。山林を相続したものの、活用方法が見つからず売却を検討したいという方は、お問い合わせください。