知っていますか? 所有する不動産を確認できる名寄帳

人が亡くなったとき、その人がどんな遺産を持っているのか、その遺産はどこにあるのか相続人が把握していないことがあります。例えば山林も、所有しているとは聞いたことがあるけれど、現在どうなっているのか分からないという場合があります。特に評価額が低くなりがちな山林は、一定の課税標準額以下になると、固定資産税が課税されないため、固定資産税の納税通知書に記載されていないことがあります。

そんなときに役立つのが名寄帳。名寄帳には、故人がどんな不動産を持っていたのか、課税されていないものも含めて一覧になっているため、相続人が把握しきれていない不動産関連の遺産を確認することができます。

山林を所有しているかもしれない。どんな不動産を持っているのか確認したい。今回はそんな方のために、名寄帳とは何か、どんなことが分かるのか、どう役立てられるのか、詳しく解説していきます。

1. 名寄帳とは?

では、名寄帳はどのようにして取得すればいいのでしょうか?

名寄帳は、不動産所在地の市区町村役場で取得できます。閲覧のみも可能ですが、遺産の内容について他の相続人と情報を共有したり、相続登記手続きに使用したりする場合は、書面で取得すると良いでしょう。

 

名寄帳が取得できる人とは?

この名寄帳は、誰もが申請できるわけではありません。申請できる人は、次の通り決められています。

 

  • 固定資産税の納税義務者(不動産の所有者本人)
  • 納税義務者が死亡している場合はその相続人
  • 利害関係人
  • 代理人

 

名寄帳は個人の資産に関する情報が記載されているため、基本的に不動産の所有者(納税義務者)本人や本人から委任された代理人、本人が亡くなった場合は相続人でなければ交付申請することはできません。

 

名寄帳は、納税義務者本人が取得する場合には、本人確認ができる書類(運転免許証など)があれば取得ができます。しかし納税義務者が亡くなった場合、必要となる書類は変わってきます。どのような書類が必要になるのか、次の項目で説明します。

3. 亡くなられた方の名寄帳の取得方法

納税義務者本人が亡くなり、相続人から請求する場合には、被相続人が死亡し、かつ、申請者が相続人であることを証明する戸籍謄本などが必要となります。

本人以外が交付申請する際に、用意しなければならない書類は次のとおりです。

  • 亡くなった方との関係が分かる戸籍謄本
  • 亡くなった方の除籍謄本
  • 申請する相続人の本人確認ができる書類

名寄帳を取得できるのは、納税義務者本人と相続人のほか、利害関係人と本人または相続人の代理人がいます。利害関係者は、借地人や借家人などが該当し、利害関係者が取得を試みる場合には、賃貸借契約書などの書類が必要となります。

本人や相続人の代理人として請求する場合には、代理人が本人であることを証明する書類のほか、委任状が別途必要となります。

また名寄帳の取得費用は、自治体によって異なりますが、だいたい1通200~300円程度であることが多いようです。

4. 名寄帳の内容確認・取得方法についての注意点

名寄帳に記載されている内容の見方と取得方法については、いくつか注意点があります。

詳しく説明していきましょう。

4-1. その年の1月2日以降の取得や売却は反映されない

固定資産税は1月1日現在の所有者に課税されるもの。そのため、固定資産税課税台帳には1月1日現在の情報が登録されています。

つまり、1月2日以降に取得したり売却したりした不動産については、翌年の1月1日まで、取得や売却の情報は名寄帳には反映されないことになります。

1月2日以降に新たに不動産を取得している可能性がある場合は、名寄帳ではなく、売買契約書を探すなど別の方法で、不動産の所在を確認する必要があります。また名寄帳に記載があっても、すでに売却しているケースもあります。

不動産が故人の名義になっているかどうかを確認したい場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すると良いでしょう。

また、法人名義で所有している不動産は、亡くなった方個人の名寄帳には記載されません。

法人が所有している不動産は、もちろん遺産分割の対象にはなりませんが、亡くなった方が代表者として1人で経営していた場合、その法人が所有していた不動産などは、次の代表者の責任の範疇となります。そのため、新たな法人の代表者は、法人名義の不動産の名寄帳を取得して、法人の所有する不動産を確認する必要があります。

4-2. 市町村ごとに取得しなければいけない

名寄帳は市区町村ごとに作成されるということを覚えておかなければいけません。そのため、故人が複数の市区町村で不動産を所有していた場合は、市区町村ごとに名寄帳を取得する必要があります。

ここで問題になるのは、不動産がどこにあるか正確に分からないケースです。少しでも思い当たる場所があれば、該当する市区町村で、名寄帳を取り寄せて不動産の有無を確認することは可能です。しかし、不動産がどの市区町村にあるかまったく見当がつかない場合は、名寄帳を取得することが難しくなります。

所有する不動産を確認する上で、名寄帳はとても便利ですが、最低限どこの市町村に不動産があるのか特定できなければ、名寄帳を取得するに至らず、雲をつかむような話となってしまいます。

そんな事態にならないためにも、あちこちに不動産を持つ所有者は、相続人が困らないように、どこにどんな不動産があるのか、別途リストにしておくことをおすすめします。

4-3. 名寄帳を取得できない自治体がある

一部の自治体では、固定資産課税台帳が名寄帳を兼ねていることがあり、名寄帳という呼び方をしていない場合があります。

また、名寄帳を取得できない自治体もあります。その際は、代わりに固定資産の課税明細書の再交付を受けて、所有する不動産を確認することになります。

5. まとめ

名寄帳は、特定の個人が所有している不動産を一覧にまとめたものです。相続が発生し、被相続人が所有する不動産の遺産を調査する際に役立てることができます。この名寄帳は、納税義務者である本人以外に、相続人や利害関係者、本人や相続人の代理人が交付申請をすることができます。
基本的に所有している不動産は、不動産のある市町村から納税義務者に送付される固定資産税の納税通知書で確認することができます。
しかし、評価額が低くなることが多い山林は、一定の課税標準額以下になると、固定資産税が課せられないことがあります。その場合は、納税義務者に通知する必要がないため、納税通知書に記載されないケースが出てきます。
もし相続人がすべての不動産をきちんと把握できなければ、山林は放置される可能性があります。そうした事態を避けるためにも、名寄帳を取り寄せて、被相続人が所有していた不動産を確認することが重要になります。
名寄帳によって、山林を所有していることが判明した場合は、しかるべき相続の手続きを行う必要があります。相続が難しい場合は、売却を検討するのも一つの方法です。

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